気分の波がある
気分の波がある
気分が落ち込んでしまう、不安感が消えない。場合によっては、元気すぎるときもある。そんなふうに、気持ちが落ち着かないことはありませんか。
気分がすぐれない、落ち込んでしまう、悩みや心配ごとが頭から離れなくなる、考えがまとまらず堂々巡りする。
そういった気分や情動の不調の原因となる代表的なものが、うつ(抑うつを伴う適応障害、うつ状態・うつ病)と躁うつ病(双極性障害)です。
適応障害とは、ストレスが原因で引き起こされる感情の症状によって、気分の障害や、自律神経の症状や身体的な不調を呈する疾患です。
適応障害の症状は多様であり、それらは受けているストレスや環境、性格などによってあらわれ方が異なります。
例えば、通学先や勤務先などでの、課題や対人関係上のストレスに対して、苦悩しつつもこなせない状態となって、気分の落ち込みや、不安、睡眠の障害、イライラ、食欲の低下などのうつ病と同様の精神の症状が出現し、動悸や嘔気、頭痛、下痢便秘など自律神経や身体の症状がみられることがあります。
治療の第一歩としては、まず、ストレスの元に気づくことです。その上で、ストレスから逃れることが可能であれば、一旦ストレスを取り除いた環境で過ごすことが重要です。
自宅などでの療養や症状緩和のための薬物療法、心理カウンセリングなどに加え、原因となっている環境の調整が非常に大切になります。
社会生活を含めて、生きてゆくことには様々な負荷がかかります。
ストレスがうまく解消されないで、心身に不調をきたすことは誰にでも起こり得ます。
眠れない、食欲がない、一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった状態が続いている場合は、うつ病かもしれません。
古典的にうつ病は、適応障害のような明らかなストレス因なく、憂うつ、もの悲しさ、絶望感、気持ちの落ち込み、睡眠障害や胃腸障害、イライラなどが生じ、それまでの社会生活および日常生活を営むことが困難となる疾患です。
しかし、全くストレス因がなく発症するとも言い切れないところもあり、適応障害と重複する部分も多く認められます。
うつ病は、精神的・身体的ストレスが重なることなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態です。脳の機能が低下し、ものの見方が否定的になり、自分がダメな人間のように感じられてしまいます。そのため普段なら難なく乗り越えられるような負荷や刺激に対しても、より辛く感じられてしまうという悪循環が生じます。
薬による治療と精神療法もうつ病に効果的なことがわかってきています。早めに治療を始めるほど回復も早いので、十分な休息と治療が必要になります。
うつ病が悪化すると、考えがまとまらず、判断力が鈍り、会話の返答が遅くなるような思考力の低下に関する症状(思考制止)もみられるようになります。
また、うつ病には三つの代表的な妄想(罪業妄想、貧困妄想、心気妄想)があり、「仕事の失敗は自分の責任で社会的に許されず、逮捕される」「お金がないので治療費が払えない、家族も路頭に迷う」「この腹痛や便秘は末期癌の症状に違いなく、もうすぐ死んでしまう」と確信し、訂正することが出来ません。自傷や自殺の恐れが高まり、入院加療を要する状態です。
外来治療としては、十分な休息、うつ病治療のための抗うつ薬などによる薬物治療が必要となります。抗うつ薬は、SSRIや三環系など、いくつかのグループに分類され、個々の薬物によって特徴が異なり、症状や副作用などを勘案して薬剤選択が必要となります。
うつ病になりやすい性格傾向(執着気質・メランコリー親和型)があり、綿密、勤勉、几帳面、徹底的、凝り性、良心的で責任感が強い、などが挙げられます。
自分を責め、退職や退学、離婚しなければならないという思考に陥ることも多く、そのような重大な判断はうつ病の回復後に行うよう指導することが一般的です。
うつ病は、うつ状態だけが起こる疾患のことを指します。躁うつ病は、うつ状態の反対の症状である、極端に活発に行動してしまう躁(そう)状態が現れ、「うつ状態」と「躁状態」を慢性的に繰り返す疾患です。以前は「躁うつ病」と呼ばれていましたが、現在では2つの極という意味での、両極の症状が起こるという意味で「双極性障害」と呼ばれるようになりました。
20歳前後が発病の中央であり、当初はうつ病としての症状があり治療を受けていたが、数年などの経過のなかで躁つ病と診断が変更になることがままあります。うつ病の治療をしても効果がない、または不十分だった方が躁うつ病であると判明することがあります。
そう状態では、過度の自尊心(例:自分は神になった様に、何でもできる確信)や、創作や職務に関してなどのアイデアが次々と浮かび、眠らなくても平気で取り組むが中途半端になったり、過度の浪費(例:マンション購入を周囲に相談なく即決する)がみられたり、怒りっぽくなって周囲に対して攻撃的な態度や言辞が明らかになるなどの症状がみられます。軽はずみに無謀な行動を取ってしまう結果、社会生活に支障をきたすこともあります。
症状が進行したそう状態である患者さんは、自身では万能感にあふれ気力が充実しており、自分が病気であるとの認識が乏しい場合が多く、入院加療が適応となることがあります。様々な刺激から離れて、睡眠をとって休息し、気分安定薬などの薬物療法が治療として必要です。
うつ病は「うつを良くする」ことが治療目標ですが、躁うつ病では、「躁・うつの波をいかに小さくできるか、コントロールできるか」が治療の目標になります。